但し書きとは?宛名はどう書く?領収書の正しい書き方を伝授!

※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。

業務で使う事務用品や書籍を購入したとき、支払った金額を経費で落とすためには、商品やサービスの提供者に領収書を発行してもらう必要があります。取引先との食事会や従業員向けの研修などでかかるお金を経費として計上するためにも領収書が必須です。領収書になくてはならないのが、何の代金を領収したかを示す「但し書き」と誰が購入したかを示す「宛名」です。

この記事では意外と知らない領収書の但し書きや宛名の書き方を解説します。記載項目が不足していたり、不十分だったりした場合に起こりうることや、インボイス制度に対応した書き方、領収書を発行するうえで注意したい点も見ていきましょう。

目次


但し書きとは?役割と必要性

但し書きとは、商品やサービスの提供者が発行する領収書の記載項目で、支払者から何の代金を受け取ったかを示すものです。基本的には「〜代として」と記載します。

レシートであれば、購入した商品が一つひとつ記載されていますが、領収書にはこのような記述はされず、但し書きに購入内容をおおまかにまとめることが一般的です。

そこでよく前述の「〜代として」という表現を使います。「書籍代として」「昼食代×4人分として」など、商品・サービス内容がある程度わかるような具体的な表現を使います。複数商品を購入した場合は最も高額なものの内容を書くといいそうです。また、可能なら、購入点数まで記載できると理想的だといわれています。

「お品代として」「雑費として」という記載をよく見るかもしれません。こういった曖昧な表現には注意が必要です。

なぜ曖昧な表現は避けたほうがいいのでしょうか。

事業において経費としてかかったものは、領収書の内容をもとに経費精算できます。つまり、利益から経費分を差し引いて、課税所得を減らすことができます。

ただ、領収書さえあればいいというわけではなく、領収書が存在していても、経費として認められないことがあります。その理由の一つとして、但し書きに「お品代として」「雑費として」など曖昧な内容が書かれた領収書があまりにも多い場合です。こういった場合、本当に事業に必要な経費かどうかが判断しにくく、税務調査時に指摘されることがあります。

このように、経費の根拠として、但し書きは重要な役割を果たします。

領収書の但し書きの書き方

領収書は、支払いが完了していることを証明する大事な書類です。取引の証拠となる証憑書類の一つなので、何かしらのトラブルが生じたときに有効です。そのためには以下の内容が揃っているといいでしょう。

(1)発行者の氏名、あるいは社名
(2)発行年月日
(3)領収した内容(但し書き)
(4)領収金額
(5)(インボイス制度対応の場合)税率ごとの内訳
(6)宛名
(7)発行者の事業所在地、電話番号
(8)(インボイス制度対応の場合)適格請求書発行事業者の登録番号

この際にも特に注意したいのは、但し書きの具体性です。内容が曖昧だと、有力な証拠書類にならない可能性があります。証拠書類として機能させるためにも、但し書きはできる限り商品・サービス内容を細かく記載した内容にするといいでしょう。

領収書の但し​書きの例と注意点

但し書きは、領収書の金額が支払われた用途を説明する部分です。通常、「但、○○代として」と記載します。「お品代として」という表記も見かけますが、これでは何を購入したのか、または何に対する支払いなのかがわかりません。

たとえば以下のような書き方が望ましいでしょう。

  • 書籍代として
  • 消耗品代として(ティッシュボックス×10)
  • 事務用品代として(ペン×10)
  • 消耗備品代として(ゴミ箱×3)
  • 贈答品代として
  • 切手代として(85円切手×100)
    など

また、会社によっては経理処理のために但し書きのルールを定めていることがあるので、お客さまに確認したうえで記載しましょう。

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領収書の宛名の書き方

領収書の宛名には、代金を支払った者(領収書を受け取る側)の名前を書きます。個人名であれば氏名を、会社名であれば正式名称を略さずに書くことを心がけましょう。「上様」や空欄でもいいのだろうかと、疑問に思うかもしれません。いま一度、宛名の書き方を確認しておきましょう。

会社名の正しい書き方

領収書の発行を依頼されたら、「宛名はどうなさいますか」と相手に確認してから書くようにしましょう。会社によって領収書に関するルールが異なるかもしれないので、受け取る側の要望に合わせて記載するようにします。

飲食店などでは、お店の運営で忙しく、領収書を丁寧に書くことは難しいかもしれませんが、重要な書類であるということを意識して、「(株)」という表記を避けて「株式会社」と書くなど、できる限り正確な情報を記入するようにしましょう。

個人名(個人事業主)の正しい書き方

個人事業主の場合、「個人名」と「屋号+個人名」の2パターンがあります。これも受け取る側の要望に合わせて記載します。

「上様」の意味とは?ダメな理由はある?

宛名に「上様」と書かれている領収書を見ることがあるかもしれません。領収書の宛名を聞かれた時に、意味も分からず「上でいいです」と答えてしまった経験もあるのではないでしょうか。

この「上様(うえさま・じょうさま)」の由来には諸説あります。古くから将軍や貴人などの目上の人を「上様」と呼んでいたことに由来しているという説や、お得意客を意味する「上客(じょうきゃく)」や「上得意(じょうとくい)」の略であるという説もあります。

いずれにせよ、領収書の宛名が「上様」では、誰が支払ったのかということがわかりません。複数の従業員から領収書を回収・管理する会社では、不正行為を防止するためにも、必要な情報が不足しているということから、「上様」の使用を禁止する場合が多いようです。経費の清算が認められなかったり、税務調査や確定申告で領収書として認められず、経費計上ができないということもあり得ます。

後から領収書を見たときに支払い者が誰であるかなどが分かるように、「上様」のような記述は極力避け、常に正式名称を記入することが好ましいです。

宛名なしにできる?

お客さまに宛名を聞いたとき、「空欄でいいです」と返されることもあるでしょう。領収書を経費の根拠として使う場合には、宛名はあったほうがいいでしょう。また、商品やサービスの提供者が次章で説明する適格請求書発行事業者に当てはまる場合、インボイス制度に対応した領収書として「書類の交付を受ける事業者の氏名または名称」の記載が求められます1

ただし、適格請求書発行事業者のなかでも、小売業、飲食店業、タクシー業いった不特定多数のお客さまを相手にするビジネスは、適格請求書の代わりに「適格簡易請求書」の発行が可能です。適格簡易請求書では「書類の交付を受ける事業者の氏名または名称」が記載事項に含まれておらず、宛名の記載は不要です。また、個人のお客さまが支払いの記録として領収書をもらいたいという場合も、空欄で問題ないでしょう。

個人名や会社名が難しい漢字や表記のとき、空欄のままにしてお客さま自身に宛名を書いてもらったほうが早いと思うかもしれませんが、これはNGです。領収書の宛名は必ず発行する側が記載するようにしましょう。

【見本あり】インボイス制度の領収書の​書き方

インボイス制度の開始に伴い、仕入税額控除(※)を受けたい課税事業者は、インボイス制度に対応した領収書を受け取る必要があります。

※仕入税額控除とはその名のとおり、売り上げの消費税額から仕入れの消費税額を控除する仕組みです。売り上げと仕入れにかかった消費税額の差額分だけを納付します。製造や流通などの過程でさまざまな金銭のやりとりが発生することを踏まえて、二重課税にならないよう設けられています。

また、「適格請求書発行事業者」の登録事業者は、インボイス制度に対応した領収書やレシート、請求書を発行することになります。国税庁が公開している「適格請求書等保存方式の概要1」に記載事項の詳細がありますが、領収書に関わる点は、合計金額のほかに、税率ごと(8%、10%)の内訳を記載しなければいけないという点です。具体的には以下のイメージにあるように、税率ごとの合計金額と、適用税率または税率ごとの消費税額を記載します。

但し書きはそれに伴い、軽減税率対象の品目については「食品(軽減税率対象)」などと、明確に記載することが求められています。

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領収書のその他項目の正しい​書き方と注意点

ここまでは但し書きと宛名の概要や書き方について解説してきました。ここでは、但し書きと宛名以外にも注意したい点をいま一度確認しておきましょう。

発行日は年月日で書く

領収書が発行された日付が分かるようにします。後になって、いつ、どのような出費があったかを把握するためには必須の項目です。領収書は、ほとんどの場合、7年以上の保存義務が法律で定められています。したがって、発行日には西暦や和暦などを含めてどの年のものかが分かるようにする必要があります。

もし、領収書を受け取る立場にいて、領収書の発行元が月日だけを記入していたら、発行年も含めるように一言かけるなどして記入漏れを防ぎましょう。

改ざん防止のために金額の書き方を工夫する

商品やサービスの代金として支払われた金額を記入します。経費に計上される金額でもあり、従業員などに対して清算される金額にもなるので正しい金額を記入することはもちろん、後から数字を追加したりして金額を変えられないように工夫する必要があります。

たとえば、金額の先頭に「¥」や「金」といった記号や文字を記入し、数字の追加ができないようにします。同じ目的で、数字の末尾に「−」や「也」を追加します。他にも、0を入れて桁数を増やしたりされないように、3桁ごとにコンマを打つようにしましょう。

コンピューターなどを使って作成・印刷された領収書に比べ、手書きで作成された領収書は改ざんされる確率が高いです。そこで、アラビア数字を使う代わりに「壱」「弐」「拾」といった複雑な漢字を使うことも不正利用防止策の一つになります。

領収書発行者を明らかにする

最後に、商品やサービスと引き換えに代金を確かに受け取ったということを証明するために、領収書を発行した者の氏名または名称を記入します。あらかじめ発行者の氏名または名称を記入した領収書のテンプレートを準備しておくといいでしょう。

領収書発行者の氏名や名称に加えて、住所や連絡先などの基本情報を入れることが好ましいです。また、必須ではありませんが、事業者の印鑑や社印などを領収書に押すことで、その文書が正式なものであり重要であることの証明に役立ちます。場合によっては、印のある領収書を受理の条件に含めている会社もあるようです。

印税

金額が5万円以上の領収書は課税対象になります。領収書の発行者は、記載金額ごとに定められている金額の収入印紙を領収書に貼り付け、印紙と紙面とにまたがるように割印をして納税します。

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※インボイス制度に対応した領収書の出力が可能です。詳しくはこちらをご確認ください。

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まとめ

おざなりにしがちな領収書の記載ですが、適切に書くことがいかに大切かを説明してきました。税務調査や法的トラブルなどは必ずしも発生することではないかもしれませんが、万が一のことを考えて日々取り組んでおくと安心でしょう。


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執筆は2017年12月4日時点の情報を参照しています。2025年2月27日に記事の一部を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。