クレジットカード決済は消費者にとって便利な決済方法です。また、事業者としても、クレジットカード決済を導入することは決済方法の選択肢を増やすという意味で重要なことです。
消費者・事業者にとってメリットのあるクレジットカード決済ですが、その一方で「偽造カード被害」の増加という問題があります。日本国内の偽造されたクレジットカードによる被害額は2014年の4.5億円から2017年には12.8億円になっており、約3倍に増加しています。
このような背景から、事業者としてクレジットカードのセキュリティーについて正しい知識を持っておくことが大切です。今回はクレジットカードのセキュリティーにまつわる知識をお伝えします。
参考:日本のクレジット統計2017年版(一般社団法人日本クレジット協会)
目次
磁気テープとICチップ
クレジットカードには「磁気テープ」もしくは「ICチップ」が搭載されています。「磁気テープ」とはクレジットカード裏面の黒色の太い線になっている部分です。「ICチップ」とはクレジットカード表面にある金色のチップのことです。
「ICチップ」は2001年頃から導入が進み、現在では多くのクレジットカードに搭載されていますが、「磁気テープ」のみのクレジットカードもまだ残っています。日本クレジットカード協会が2022年に実施した調査によれば、ICチップ搭載のクレジットカードの利用率は80%程度のようです。
事業者が利用する決済端末の中にも「ICチップ」に対応していないものがあります。不正利用への対策として、政府ではICチップ付きのクレジットカードの普及率を2020年までに100%にすることを目指すとともに、2018年6月1日に施行された改正割賦販売法では、クレジットカードを取り扱う事業者に対してICチップに対応した端末の設置を求めています。
参考:割賦販売法改正に伴うセキュリティ対策の取組みについてのお知らせ(一般社団法人日本クレジット協会)
ICチップの特徴
ICチップは磁気テープと比較してよりセキュリティーが強化されています。磁気テープには、今ではあまり見かけないカセットテープやビデオテープと同じ技術が使われています。磁気テープ上に情報が直接転写されているので、カード番号などの犯罪に利用されるデータがカード上にあり、読み取った情報からクローンカードが作られ、不正利用される危険性があります。
一方、ICチップには不正利用を防止するセキュリティー機能が備わっています。ICチップはCPUやメモリーを搭載した小さなコンピューターともいわれ、データの漏えいや改ざんを防ぐ仕組みになっています。膨大な情報を記録でき、記録したデータの暗号化もできるので、データの抜取りは難しくなります。
EMVとは
EMVはEuropay、Mastercard、VISAの頭文字を取ったもので、ICカードに関する国際規格です。クレジットカードに搭載されるICチップ、また事業者が利用するクレジットカードの決済端末ともに、この国際規格に準拠する必要があります。
ライアビリティシフト
事業者として知っておきたいのは、「ライアビリティシフト(債務責任の移行)」です。
2015年10月1日から、対面でICカード決済をする際に、ICチップの情報でなく、磁気テープの情報を読み取ってカード決済し、その取引が偽造カードによる不正利用であると判明した場合には、カード発行会社ではなく事業者(加盟店)側にその不正被害の債務責任が移行しています。
PINバイパスの廃止
ライアビリティシフトと合わせて、対面でクレジットカード決済を受け付ける事業者が念頭に置いておきたいのが、PINバイパスの廃止です。「PINバイパス」とは、クレジットカード決済時に暗証番号(PINコード)の入力を省略してサインで本人確認することを指しています。この機能は、お客さまが暗証番号を忘れたときの救済措置として設けられてきましたが、2025年3月をもって原則廃止されます。そのため、お客さまがPINコードを忘れた場合には、PINバイパス廃止の旨を案内したうえで、代替案としてPINコードを覚えているほかのカードはないか、または自店舗で受け付けているほかの決済方法をお持ちでないかを確認する必要が出てきます。PINバイパスの廃止について、詳しくはこちらをご確認ください。
ICカード対応の必要性
前述の改正割賦販売法やライアビリティシフトからも、ICカードへの対応が急がれていることが分かります。もし、ICカードに未対応の決済端末を利用しているなら、なるべく早く端末の切り替えが必要になってきます。
端末にかかるコストが気になる事業者もいるかもしれません。SquareのEMV準拠をクリアした専用のICカードリーダー(Square リーダー)は、4,980円(税込)で購入できます。月額利用料金などといった固定費用はかからないので、コストを抑えながらICカードに対応できるうえ、たった一つの端末でクレジットカード決済と電子マネー決済の両方を受け付けられるようになります。ぜひ導入を検討してみてください。
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執筆は2018年6月22日時点の情報を参照しています。2025年2月5日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash