飲食店で役立つハウスルールとは?作成のポイントやメリットを紹介

ハウスルールとは、従業員が守るべき職場独自の規則です。飲食店でよく設定され、サービスの質の向上や離職率の低下を期待できます。

本記事では、飲食店おけるハウスルールの重要性をまず整理し、ルールとして定めるべき項目や作成ポイントについて解説します。

目次


ハウスルールとは

ハウスルールは店舗や施設、組織において、そこで働く従業員全員が気持ちよく働けるように独自に設定する規則で、ローカルルールの一種です。

ローカルルールとの違い

「地元のルール、地方のルール」といった意味を持つローカルルールの適用範囲は特定の店舗や組織に限りません。たとえばトランプゲームの「大富豪」は地域によってルールが異なることで知られていますが、この地域だけで通じるルールがローカルルールに該当します。

ハウスルールは、ローカルルールが転じたもので、店舗や組織といった、より狭い範囲で適用される点が特徴です。挨拶や身だしなみなど「暗黙の了解」で成立しがちなことがらを明文化して従業員間の認識を統一するほか、接客の指針や衛生管理の基準の明確化によって質の高い店舗運営につなげます。

ハウスルールは飲食店になぜ必要?

従業員のための規則であるハウスルールは業種を限らずさまざまな店舗で採用されていますが、とくに飲食店での採用が多くみられます。ここでは飲食店を運営する視点でハウスルールの必要性を整理していきましょう。

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従業員のモチベーションを上げられる

来店客や従業員のシフトなど店内の状況が日々異なる飲食店では、常に臨機応変の対応が求められるため、接客の指針や判断基準が明確になっていると従業員も迷わず業務に取り組めます。

指示が人によって異なるような状況では、誰のどの指示に従えばよいのかわからず、従業員が消極的な行動しかとらなくなったり、不満が溜まり職場環境が悪くなったりするかもしれません。適切な行動指針や基準の整備は従業員の自発的な行動を促し、成長実感も得やすくなるため、働く意欲の向上につながります。

サービスの質が良くなり安定する

店舗の理念や運営方針に沿ったハウスルールを設定すれば、従業員によるサービスの質のばらつきを防げます。

たとえば、飲食店にとって重要な4要素であるQSCA(Quality:品質、Service:サービス、Cleanliness:清潔さ、Atmosphere:雰囲気)は、飲食業界で働いたことのある者には知られていても飲食店未経験者には馴染みが薄く、行動が身についているとは限りません。

このような基礎知識や基本的な行動の基準、店舗としての理念や方針の明文化によって、新人従業員でも一定水準のサービスを提供できるようになり、店舗全体のサービスレベルを安定させることができます。

従業員同士のコミュニケーションが良くなる

誰にでもわかりやすいハウスルールは記憶に残り、従業員間の共通言語となって意思疎通をスムーズにしてくれます。行動指針が明らかで目的や目標がはっきりしていると同じところを目指すための助け合いも生まれやすく、ピークタイムなど忙しい時間帯でも連携をとりやすくなります。

また、タイムカードを押すタイミングや更衣室の使い方なども、ルールを定めておくと不公平感が生じにくくなるため、人間関係のトラブルも未然に防げるでしょう。ハウスルールは雰囲気のよい職場づくりでも重要な役割を果たすのです。

離職率を下げられる

適切な内容のハウスルールは、働きやすい職場をつくるために設けられるものであることが明確になります。ハウスルールが従業員を拘束するのではなく、むしろ従業員を守るのだとわかれば、従業員の仕事への意欲が高まり、職場の雰囲気もよくなっていくため、従業員の離職率を抑える効果も期待できます。

従業員が楽しんで取り組めたり、メリットを感じたりするルールが含まれていると、さらに定着率は高まるでしょう。

ハウスルールの種類

飲食店におけるハウスルールは、大きく分けてサービス・衛生管理・勤務姿勢の三つについて指針や基準を定めていきます。それぞれ具体的な内容をみていきましょう。

サービスに関するルール

サービスに関するルールでは、おもに接客や電話対応の方法を示します。顧客対応の統一感が生まれるほか、ミスやクレームの軽減にもつながります。

接客の仕方

接客では、人に対する敬いや真摯な気持ちが伝わるよう、行動を具体的に示します。たとえば、表情や立ち姿勢、接客用語、接客の心構えについて、下記のように誰もが同じ対応をできるように明文化しましょう。

  • 口角を上げて笑顔をつくる
  • 注文を受けたときの返事(かしこまりました / ありがとうございます など)
  • 元気のよい接客 / 落ち着いた雰囲気の接客
  • 判断に困ること・わからないことはその場で返答せず、店長や先輩に確認する

そのほか、お客さまから呼び止められたときの返事や来店時・退店時の挨拶などのルールも考えられます。店舗の雰囲気を考慮して決めていきましょう。

電話対応

電話による対応は、顔が見えない分、よりていねいな言葉遣いが必要です。来店予約の受け付け方も手順と聞き取る内容を具体的に示しておくと、誰でも落ち着いて対応できるようになります。

たとえば、次のような流れが一般的です。

1.「お電話ありがとうございます。<店舗>でございます」で発話する
2.予約日時、人数、代表者の氏名・連絡先を復唱確認する
3.「<店舗>の●●(従業員名)が承りました」といって終話する

箇条書き程度でよいので項目を簡単にまとめ、電話の近くの目につくところに備えつけておくとよいでしょう。

衛生面に関するルール

飲食店にとって衛生管理は非常に重要です。従業員の身だしなみや手洗い、清掃についても基準や方法を明らかにしておきましょう。

身だしなみ

髪・ひげ・爪の整え方や、ピアス・時計といった装飾品、制服の着こなしなど、なぜ必要なのかを明確にしながらルールにしていきましょう。

最近は髪色自由とする飲食店が増えていますが、衛生面を考慮すると、長さについては基準を設けるのが無難です。耳や目にかからない程度、それより長い場合は結う、あるいはバンダナに収めるなど、具体的な基準を決めましょう。

制服を設けていない店舗については、黒のTシャツに黒の長ズボンといったかたちで色味を指定すると統一感が生まれます。

手洗い

コロナ禍が収まって手洗いについての意識が薄れてきていますが、食べものを扱う飲食店では変わらず重要な項目です。下記のような形で、手洗いのタイミングと洗い方を示しておきましょう。

  • 出勤時と休憩から戻ったときに必ず手を洗う
  • 手洗いはハンドソープで爪の間や手首までこすり、15秒以上かける
  • 水気がなくなるまでペーパータオルでしっかり拭き取る

図解や動画で説明すると、より理解しやすくなります。

清掃の仕方

飲食店においては、フロアやトイレ、店舗前などの掃除やゴミ捨てといった清掃に関わる業務が複数あります。これらの清掃業務に関しても、いつ・誰が・どこを掃除するのか、使用する道具と手順も示し、誰でも迷わず同じクオリティで取り組めるようにルール化しましょう。

勤務に関するルール

顧客に直接関わらない部分ですが、勤務全般に関するルール設定も重要です。従業員同士の挨拶や更衣室・ロッカーの使い方など、一見業務には関係なさそうなことでも、公平で納得のいくルールがあると従業員の満足感が変わってきます。快適な職場環境をつくるために、細部まで気を配りましょう。

従業員同士の挨拶

挨拶や声かけは人間関係の基本です。飲食店ではさらに、お客さまに聞こえても不快感を与えないような配慮も求められます。

例として、出勤時は時間帯に関わらず「おはようございます」、退勤時は「お先に失礼します」と統一すると、誰でも気持ちよく挨拶でき、職場の一体感も生まれます。

また、お手洗いに行くときは「3番行ってきます」などと番号で伝えるようにすると、お客さまに不快感を与えません。

休憩に入るとき、休憩から戻るときなどの挨拶も決めておき、互いに気持ちよく、誰かが持ち場を外してもスムーズに連携がとれる環境を整えましょう。

タイムカード・シフト管理

タイムカードを押すタイミングやシフトの希望の提出方法、やむを得ず欠勤する場合の連絡方法も明確にしておきましょう。曖昧なままだと、「あの人だけずるい」とほかの従業員が不満を抱きかねません。

とくにシフトの提出や欠勤の連絡に関しては締切や連絡方法を指定するなどのルールも重要です。

更衣室・ロッカーなどの使い方

勤務中、貴重品を預けておく更衣室やロッカーについては、盗難や紛失のトラブルを未然に防ぐためにも使用ルールが必要です。私物の置き場所や携帯電話のホールへの持ち込み可否、ロッカーの施錠の徹底などをルールとして定めておきます。

トラブルや不満が起きづらくなるほか、従業員の共用スペースをきれいに使ってもらう効果も期待できます。

ハウスルールの作り方と注意点

せっかくルールを作成しても、従業員に浸透しなければ効果が期待できません。一方で、ハウスルールは細かな項目が多くなりやすいため、従業員にスムーズに実践してもらうためには工夫が必要です。ここではハウスルールの作成・運用のポイントを三つ紹介します。

マニュアルにして共有する

作成したハウスルールはマニュアルとしてかたちにし、厨房やレジカウンター、更衣室などに備えつけて、いつでも、誰でも確認できる状態にしておきましょう。紙やデジタルデータで従業員に配布するのも効果的です。

またハウスルールをマニュアル化しておけば、新人従業員の教育にも使えます。マニュアルによって教える手間もある程度省け、効率よく指導を進められるでしょう。

わかりやすくシンプルに作る

ハウスルールは飲食店未経験の新人従業員でも理解できるように、できるだけシンプルかつ平易な表現でまとめます。たとえば、飲食業界では常識ともいえるQSCAも一般の人には伝わらない可能性が高いため、このような専門用語はできるだけ避けるか、使用するなら補足説明を添えることも大切です。

また、手洗いの手順や清掃の方法などは、図解や写真を活用するとより伝わりやすくなります。

従業員誰もが実践できて店舗に根づくルールとするためにも、簡潔さ、わかりやすさを意識して作成しましょう。

定期的に更新する

店舗や社会状況に応じたハウスルールの見直しも必要です。最初から完璧なルールにしようと考えるといつまでたっても完成しません。また、店舗の成長ステージや世の中の状況が変化すれば、最適とする基準も変わっていきます。

まずは作成したルールを一度運営してみたうえで、従業員の声に耳を傾けながら適宜よりよいものへとブラッシュアップしていきましょう。

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まとめ

ハウスルールは従業員にとって働きやすい環境を整えるために、店舗や組織が独自に設定する規則です。働く意欲やサービスの質を向上する効果もあり、業務のマニュアルとしても活用できます。

おもにサービス・衛生管理・勤務姿勢の3カテゴリについて、誰もが迷わず実践できるようなシンプルでわかりやすいルール作成を心がけましょう。


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執筆は2025年3月3日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash