副業・兼業支援補助金を解説!副業解禁に伴い対応すべきことやメリットも紹介

大手企業の副業解禁のニュースを耳にし、社員の副業について考えるようになった経営者もいるのではないでしょうか。

副業を解禁する際に押さえておきたいのが、2023年4月から始まった「副業・兼業補助金」です。副業・兼業での人材活用の促進を掲げた経済産業省による取り組みです。社員の副業・兼業を許可する企業、他社で勤務する人材を副業として受け入れる企業が対象で、前者の場合は最大100万円、後者の場合は最大250万円の補助を受けることができます。

参考:副業・兼業補助金(経済産業省) 

社内規定を更新したり、専門家に意見を求めたりするうえで発生した経費の一部が補助対象になるこの機会に、副業の活用を前向きに検討したいところです。この記事では「副業・兼業支援補助金」の詳細はもちろん、副業解禁の背景やメリット・デメリットなどもあわせて解説していきます。

目次


副業解禁の背景と現状

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コロナ禍で副業という言葉を以前に増して耳にするようになりましたが、実は厚生労働省では2018年からより多くの人が副業に取り組める環境づくりを推進しています。2018年1月に改定された「モデル就業規則」では「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」が削除され、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」と新たに記載されていることから、その働きかけが伺えます。副業を推進する背景として、以下のような働き方を選べる環境づくりを目指していることが挙げられます。

参考:モデル就業規則について(厚生労働省)

「副業・兼業は、新たな技術の開発、オープンイノベーションや起業の手段、そして第2の人生の準備として有効とされています。また、人生100年時代を迎え、若いうちから、自らの希望する働き方を選べる環境を作っていくことが必要であり、副業・兼業などの多様な働き方への期待が高まっています」

引用:副業・兼業の促進に関するガイドライン わかりやすい解説(厚生労働省)

ただ、副業への関心の高まりは、働き方を見直すきっかけとなったコロナ禍による影響が大きいといえるでしょう。具体的には収入に対する不安が生まれたことや、在宅時間が増えて副業に取り組める時間ができたことなどが主な理由となっているようです。

参考:【副業についての意識調査】「収入不安」「在宅時間の増加」によって70%以上が副業への関心アップ。副収入の目標金額は「月100,000円以上」が多い結果に(2020年11月27日、モノオク株式会社)

厚生労働省は2018年以降、副業・兼業の促進に関するガイドラインを2度改定し、2022年7月に公開された改訂版では、

  • 副業・兼業を許容しているか
  • 条件付きで許容している場合、その条件は何か

を自社のホームページなどに公表するよう求めました。このような国からの後押しや、デジタルトランスフォメーションが進み、企業が副業を認める環境を整備しやすくなったこと、副業の求人が増加したことなどが副業の広がりに貢献しているといえるでしょう。

実際にコロナ禍の2022年9月に株式会社マイナビが発表した「中途採用実態調査(2022年)」では、「副業・兼業を許可する制度がある」と答えた企業は7割近くもいたそうです。

参考:中途採用実態調査2022年版~副業導入企業は約7割に(前年比7.4pt増)~(2022年9月22日、マイナビキャリアリサーチLab)

前述の調査では「副業・兼業制度を導入した理由」として、以下が挙げられていました。

社員の収入を補填するため 38%
社員のモチベーションを上げるため 37%
社員にスキルアップしてもらうため 35%
従業員の企業に対する信頼度を高めるため 35%
優秀な人材を確保するため 34%
新たな知見や人脈を獲得するため 33%
生産性を向上させるため 32%
ヒューマンリソースを拡大するため 30%
新事業の発案につなげるため 29%

副業への関心を聞いた株式会社日経HRの調査では、副業の目的として「収入確保のため」を挙げる人が最も多く、次に「自分の能力を生かすため」や「スキルアップ・成長のため」を求める人が多くいたことが分かっています。

参考:新型コロナで副業機運高まる、会社員6割が「関心ある」(2020年12月1日、株式会社日経HR)

副業解禁のメリット

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社員の副業を認めることには、どのようなメリットがあるのでしょうか。

異業種のノウハウが会社に還元される

本業とは異なる分野や事業に副業で携わることで、今まで以上に多角的な視点を持てるようになります。未知の分野に対して知識を深めたり、本業ではできないさまざまな経験をしたりするためです。副業を認めることは、結果的に本業にも良い効果をもたらすといえるでしょう。

社員のスキルアップにつながる

決められた役割のなかで業務をこなしていると、担当できることや身につけられるスキルの範囲がある程度制限されてしまいます。副業を可能にすることで、社員は本業ではチャレンジしづらい領域の業務に取り組むことができ、副業で身につけたスキルを本業にも生かせるようになるなど、相乗効果をもたらす可能性があります。

離職率の低下につながる

社内で希望の業務につけないとき、転職を考える社員もいるかもしれません。ただ、優秀な人材を失うことは会社の損失にもつながります。副業が認められていれば、会社を退職せずに副業として希望の業務に取り組むことが可能です。このように柔軟な働き方ができたり、本業を辞めることなく収入を増やせたりできることは、社員のモチベーションや満足度向上にもつながるかもしれません。副業解禁は、人材の流出も防ぐことができます。

副業解禁のデメリット

実際に副業を解禁するにあたり、どのようなデメリットが考えられるでしょうか。

機密情報が流出する可能性がある

他社で勤務する以外にも、不特定多数の人に情報を届けるYouTuberになる、個人事業主として起業するなど、副業の取り組み方はさまざまでしょう。

副業をする形態によっては、他社に情報が漏れてしまう可能性だけでなく、不特定多数の人々の前で機密情報が暴かれてしまうリスクもあります。情報漏えいについては副業解禁前に多くの企業が慎重になる点かもしれません。

業務上の秘密を守るための「秘密保持義務」や自社と競合する業務を行わないための「競業避止義務」などを就業規則に含むのはもちろん、あらためて社員に注意喚起するなどして、機密情報を守りましょう。

本業に支障をきたすリスクがある

社員が副業をはじめると、本業に割ける時間や労力が削がれてしまうことが想定されます。また、どちらでもしっかり成果を出そうとすることで身体的・精神的ストレスが増え、本業に影響が出たり、生産性が低下したりする可能性もあります。先を見据えて、心身の健康を配慮できるような仕組みづくりが大切です。

給与の計算が複雑になることも

副業を認めるとなると、労働時間の通算などが困難になることが見込まれます。作業負担を軽減しながら労働基準法に遵守する方法として、厚生労働省は管理モデルという通算方法を推奨しています。おおまかにいうと、副業先と自社での労働時間の上限を定めておくというものです。導入するには、自社だけでなく副業先にもこのモデルに応じてもらう必要があります。詳しくは「副業・兼業の促進に関するガイドライン わかりやすい解説」の16ページに記載があるので、目を通しておきましょう。また、社員がフリーランスとして仕事を請け負う場合や起業をした場合など、労働基準法が適用されない場合は通算する必要はありません。

副業を本業にしてしまう可能性がある

本業をこなしながら新たな分野にも挑戦できる環境づくりは人材確保にもつながりますが、だんだんと副業に興味が傾いてしまうことも考えられます。結果として離職する人が出る可能性も、ゼロではないでしょう。

副業解禁に伴い企業が対応すべきこと

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副業解禁を決定したら、次のことを考え、実行しましょう。

社内ルール・就業規則を改定する

副業を認めると決めたら、社内ルールや就業規則を改定する必要があります。副業の申告方法や労働時間の通算方法、社員の過重労働をどう対処するのかなど、細かい点を決めていきます。さらには互いに合意をしたうえで副業をはじめられるよう、「副業・兼業に関する合意書」などを用意しておくことが望ましいでしょう。「副業・兼業の促進に関するガイドライン わかりやすい解説」には合意書の様式例が記載されているので、参考にしてみてください。

健康管理を実施する

副業をしていない場合でも、健康診断やストレスチェックを実施するなどして社員の健康を配慮することは、労働安全衛生法に定められた会社の義務です。副業を認めた場合、長時間労働などで身体を壊してしまうリスクがさらに高まる可能性があります。そのためにも適切な措置を講じる必要があるでしょう。

評価方法の見直し

現在の社員に対する評価方法を見直しましょう。売上成績など成果が分かる営業職や販売職などの職種がある一方、明確な成果が見えづらい職種などもあるでしょう。成果が見えづらい社員が「本業を疎かにして副業をしている」と誤った評価を受けないよう、評価方法を見直してはどうでしょうか。

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割増賃金

労働基準法により、1日8時間を超える労働には割増賃金の支払う必要があります。副業を認める場合、労働時間の通算に関して労働基準法第38条では以下のように定めています。

第三十八条 労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。

引用:労働基準法

上記によると、事業場が異なる場合でも労働時間は通算されます。そのため、労働者には割増賃金を受け取る権利があります。本業の会社、副業として働く会社のどちらが割増賃金を支払うかは、後から労働契約を交わした会社が負担するのが一般的なようです。

参考:ダブルワークの労働時間通算(アデコ株式会社)

その他にも、副業を認めることで変更しなければならない制度があるか、社会保険労務士などの専門家に確認しながら手続きを進めましょう。

副業解禁を支える「副業・兼業支援補助金」とは

副業を認めやすく、受け入れやすくするよう、経済産業省では新たな試みとして2023年4月より「副業・兼業支援補助金」の公募を開始しています。

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補助金の申請対象は、副業を認める企業、あるいは副業として人材を受け入れる企業です。それぞれの補助の上限額や要件を見ていきましょう。

社員の副業を認める場合

自社で働く社員の副業を許可する場合は、最大100万円の補助が受けられる「類型A 副業・兼業送り出し型」に当てはまります。事業内容については以下の表をご確認ください。

補助率 1/2以内
補助上限額 100万円/1事業者
補助対象経費 ・専門家経費
・研修費
・クラウドサービス利用費
要件 自社の従業員がほかの企業などでの就業などを認めるための環境整備であること。また、以下のいずれの要件も満たすものであること:
(1)従業員の就業に関する社内ルール(就業規則等の社内ルールとして明文化されたものに限る。以下同様)の改定を伴うこと
(2)社内ルールの改定によって、従業員の副業・兼業を認める範囲が広がることが見込まれる
(3) 改定後の社内ルールが、モデル就業規則(厚生労働省)第70条 (※)の規定に準じたもの、または、同条の規定よりも広範に従業員の副業・兼業を認めるものになること
(4)改定後の社内ルールについて、全ての従業員に周知することが見込まれること

※モデル就業規則(厚生労働省)第70条については、公募要綱からご確認ください。
参考:副業・兼業支援補助金 公募要綱(経済産業省)

補助対象経費について詳しくは公募要綱にも記載がありますが、それぞれの費用例を紹介します。

専門家経費 就業規則の作成や改定、人事制度の設計に関して、社労士・弁護士等への相談費用および旅費
研修費 副業・兼業に関する外部講師による研修費
クラウドサービス利用費 副業・兼業を行う従業員の勤怠管理、労務管理を行うためのクラウドサービスの利用費

副業を受け入れる場合

他社で勤務する人材を副業や兼業として受け入れる場合は、最大250万円の補助が受けられる「類型B 副業・兼業受け入れ型」に公募申請しましょう。詳細は以下の通りです。

補助率 1/2以内
補助上限額 250万円/1事業者
(副業・兼業人材の受け入れ1人あたり:50万円、補助上限は5人まで)
補助対象経費 ・仲介サービス利用費
・専門家経費
・旅費
・クラウドサービス利用費
要件 ほかの企業など(自社との間に独立性が認められない企業を除く)において雇用契約、または業務委託契約に基づき就業している個人と新たに雇用契約、または業務委託契約を締結すること。同契約に基づき、当該個人が当該ほかの企業などでの就業を継続している状態のまま、自社の業務に就業させるものであること。以下のいずれの要件も満たすものであること:
(1) 自社の業務に就業させる期間が、少なくとも3カ月以上であること
(2)受け入れる人材が有するスキルや経験などを活用することが、受け入れ企業の経営課題の解決につながると見込まれること(自社の既存の業務に関する人員不足に対応するために、当該業務に関する人員として、副業・兼業人材を受け入れる場合を除く)

人員不足のために副業を受け入れる場合は、本事業の対象にはならないようなので注意が必要です。対象になる経費の詳細も見ていきましょう。

仲介サービス利用費 求人掲載料や人材の受け入れを仲介するサービスの利用にかかる手数料
専門家経費 ・副業・兼業人材と締結する契約書の内容について、専門家に受けた相談費用および旅費
・副業・兼業人材への業務の割り振りをより効果的に行うための専門家相談費用および旅費
旅費 副業人材が副業を行う企業を研修や現地視察などで訪れた際に発生した電車賃・新幹線料金・航空機代・宿泊施設での宿泊費など
クラウドサービス利用費 受け入れる人材のために利用するクラウドサービスの費用(月額利用料、年間費用なども含む)

仲介サービスなどを導入する際には可能な限り2社以上を検討し、最低価格のものを採用すること、支払方法は銀行振込、クレジットカード1回払いまたは口座振替であることなど、補助経費については細かな留意事項が複数あります。公募要綱に記載があるので、申請前にしっかりと目を通しておきましょう。

▶︎副業・兼業支援補助金 特設サイト

副業にはSquare

企業で働く以外にも、副業には選択肢がたくさんあります。フリーランスで語学を教えたり、ネットショップを立ち上げたり、SNSのインフルエンサーになったりするのも副業の一つかもしれません。Squareには副業をする際に役立つさまざまなツールを用意しています。副業をしたいと考えている人には以下のツールが特におすすめです。

商品を販売するなら、ネットショップ機能

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ネットショップより簡単!決済リンク機能

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▲イメージ

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感染症の影響を受けて、働き方にも多様性が求められるようになりました。この流れに適応できるよう、副業を認めよう、あるいは受け入れようと考えている企業は、「副業・兼業支援補助金」への申請を検討し、経費削減につなげてみてはいかがでしょうか。


Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。
執筆は2017年10月31日時点の情報を参照しています。2023年5月17日に記事の一部情報を更新しました。 当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。 Photography provided by, Unsplash