※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。
予約の無断キャンセル(ノーショー)は、事業者の頭を悩ませる問題の一つです。しかし適切な対策を導入すれば、無断キャンセルの発生そのものを防げるだけでなく、キャンセル発生時の損失を最小限に抑えられます。そこで今回は、無断キャンセルの現状や背景を理解したうえで、具体的な対策方法、無断キャンセル発生時の対処法を一緒に見ていきましょう。
目次
- ノーショー(無断キャンセル)とは?
- ノーショー(無断キャンセル)が起きる背景
- ノーショー(無断キャンセル)の7つの対策方法
- ノーショー(無断キャンセル)が起きたらどうするか
- キャンセル料の相場は?
ノーショー(無断キャンセル)とは?
ノーショー(No Show)とは、予約したにもかかわらず、お客さまが当日現れないことを指します。「無断キャンセル」とも呼ばれています。予約当日や前日などのキャンセルは「ドタキャン」と呼ばれ、「ノーショー」とは区別されています。
当日キャンセルとの違い
当日キャンセル(ドタキャン)とノーショーとの主な違いは、「キャンセルの連絡があるかないか」です。予約時間までにキャンセルの連絡があれば、店舗は押さえていた席や部屋を解放して当日の予約を受け付けるなどの対応を取ることができます。それに対してノーショーの場合は、お客さまが来るかどうかがわからないまま枠を確保し続けるため、結果的に売上機会の損失や人件費および材料費の無駄につながります。
ノーショーの実態
株式会社TableCheckが2020年に行った調査1によると、飲食店を無断でキャンセルした経験のある人は約12%。およそ9人に1人と考えると、決して少なくない割合であり、事業への影響は無視できません。
実際に、経済産業省の有識者勉強会が2018年に公表したレポート2では、飲食業界で「ノーショー」による被害額は推計で年間2,000億円であり、飲食業従事者全体における賃金の2%強に相当することがわかりました。さらに、予約1~2日前に起こる「ドタキャン」も合わせると、その被害額は1.6兆円にのぼると推計されています。
ノーショー(無断キャンセル)が起きる背景
なぜ無断キャンセルは発生するのでしょうか。事業者側、そしてお客さま側、双方の視点から背景を考えていきましょう。
キャンセル料金の未設定
ホテルや旅館ではキャンセル料金を明示している施設が多いですが、飲食店や美容室、ネイルサロンなどでキャンセル料金を設定しているところはまだあまり多くはありません。お客さまから「感じが悪い」と思われることを懸念してキャンセル料金を設定していない店舗も多いのではないでしょうか。
予約情報の証拠が残らない
グルメサイトやお店の公式サイトからの予約であれば記録は残るものの、予約者が登録したメールアドレスや電話番号が虚偽のものであると、相手を突き止めるのは難しいでしょう。また、電話予約などの場合はやりとりが残らないため、「言った言わない」でトラブルになることもあり得ます。
「とりあえず予約」が増えた
先ほどのTableCheckの調査によると、無断キャンセルをした理由の第1位は「とりあえず場所確保のため予約」、無断キャンセル時の予約手段としてもっとも多いのは「グルメサイト」だとわかりました。同調査の発表資料では「気軽に予約できるグルメサイトでは有効なキャンセル防止の仕組みが整備されていない」と指摘されていることからも、無断キャンセルの大きな要因は予約のしやすさそのものではなく、キャンセルに対する防止策がないことだといえるでしょう。
お客さまがキャンセルできなかった
お客さまのなかには、店舗の営業時間内に電話連絡をすることができなかったり、突然の体調不良や不測の事態で来店ができなかったりする場合もあります。
うっかりキャンセル
故意にではなく、予約したこと自体を忘れてしまったり、予約システムからの予約成立メールを見逃して予約が成立していないものと勘違いをして現れなかったりなどの「うっかりキャンセル」も起こり得ます。
ノーショー(無断キャンセル)の7つの対策方法
こうした現状を背景に、店舗側が取れる対策は複数あります。考えられる方法を見ていきましょう。
(1) 事前決済でトラブルを未然に防ぐ
予約と同時に決済を完了させる事前決済は、無断キャンセルを防ぐ有効な手段です。さまざまな予約システムが事前決済機能を提供しており、「Square 予約」もその一つです。
(2) クレジットカード情報の入力を必須にする
宿泊施設ではネット予約時にクレジットカード情報の入力を求めるケースが多く、それが無断キャンセルの抑止に一役買っています。飲食業や美容サロンなどでも同様のシステムを導入すれば、「とりあえず予約しておこう」という軽い気持ちでの予約を減らせるでしょう。予約システムのなかには、実際に無断キャンセルが発生した際にキャンセル料金を課金できる機能もあります。たとえば、前述の「Square 予約」でも、キャンセルポリシーに沿ってお客さまが事前に登録したクレジットカードにキャンセル料金を請求できる機能を提供しています。
予約管理はSquare 予約で
Squareの予約管理は無料から導入でき、事前決済はもちろん、有料プランの場合はキャンセル料も取れるので、ノーショー対策もできます。専用アプリでも、お使いのブラウザでも、場所を問わず、どこでも予約の状況を確認、調整できます。
(3)メールや電話でリマインドする
予約方法の種類にこだわらず、予約の3日前や前日などに、予約したお客さまに電話やメールなどでリマインドを行うことも無断キャンセルを防ぐのに効果的です。あくまで「おもてなし」の精神で、丁寧に来店を促すようにしましょう。
(4)キャンセルポリシー、キャンセル料を明示する
キャンセルに関する注意事項をまとめたものを「キャンセルポリシー」といいます。予約サイトや自社サイト、さらにSNSでも、お客さまに確認しやすい場所にキャンセルポリシーを示すことが大切です。また、電話での予約でも、きちんとお客さまに口頭で説明をし、理解してもらいましょう。店頭での予約であれば、キャンセルポリシーを明記したチラシなどを手渡すのも一つの手段です。
キャンセルポリシーには、以下の項目を明示しましょう。
- キャンセル発生時の連絡方法や連絡先
- キャンセル可能期間
- キャンセル可能期間が過ぎた際のキャンセル料金
- キャンセル料金の請求方法
キャンセル料の相場や決め方はのちほど解説します。
(5)キャンセルが簡単にできるようにする
たとえば、電話だけで予約を受け付けている店舗では、お客さまは営業時間内に連絡をする必要があります。お客さまの都合によっては、営業時間内に電話をすることが難しいこともあるでしょう。メールやSNSのダイレクトメッセージでもキャンセルを受け付けるようにすれば、お客さまは空いた時間に連絡を入れることができます。また、予約システムのなかには、クリックするだけで簡単にキャンセル手続きができるサービスもあります。
(6) キャンセル待ちリストを作成する
キャンセルの発生に備えてキャンセル待ちリストを作るのも有効な対策の一つです。ただし、無断キャンセルの場合は急な空きとなるため、手動管理のリストではお客さまを見つけるまでに手間や時間がかかるかもしれません。
そこで重宝するのが、予約システムのキャンセル待ち機能です。キャンセルが発生すると、リスト上のお客さまが自動で繰り上がったり、空きの発生を伝えるメールが一斉配信されたりするため、忙しい営業時間内でも空きを埋める労力を最小限に抑えられます。
(7) 回収代行サービスや無断キャンセル保険を利用する
キャンセルによる損害を取り戻す方法として、キャンセル料回収代行サービスを利用する手もあります。多くは弁護士事務所がサービスを提供しており、無断キャンセルで困っている店舗は相談してみるのもよいかもしれません。また、予約システムのなかには、無断キャンセルのキャンセル料を補償するサービスを提供しているものもあります。
ノーショー(無断キャンセル)が起きたらどうするか
いくら万全な対策をしても、ノーショーが発生する可能性はゼロにはなりません。いざというときに適切に動けるよう、あらかじめできることを知っておきましょう。
空きを無駄にしないためにできること
キャンセル待ちのお客さまに案内する以外にも、SNSで空きの情報を発信する手があります。今空いている枠を埋めるという性質上、スピードが勝負です。できるだけ多くの人の目に触れるよう、コンテンツやハッシュタグ、投稿の仕方などを工夫しましょう。また近隣の店舗や宿泊施設にも空き情報を速やかに共有すれば、満席あるいはダブルブッキングで断らざるを得ないお客さまに案内してもらえるかもしれません。
急に空いた人手や時間をチャンスだと捉えるのも一つの手です。忙しくて後回しにしてきたタスクや、普段は手が回らない細かな場所の掃除など、時間や人手があるからこそできる業務は意外と多いもの。気持ちを切り替えて、未来のお客さまによりよいサービスを提供する準備を進めましょう。
キャンセル料を請求する
ノーショー対策としてキャンセルポリシーやキャンセル料を明示している場合は、それに沿って実際にキャンセル料を請求できます。
ただし、キャンセル料の回収が難しいサービスもあります。たとえば、商品の購入予約の場合、キャンセルが発生しても別の購入者に販売すれば損害が生じないため、キャンセル料を設定していても無効とされることがあります。また、エステや語学教室などのサービスは特定商取引法の対象となっており、キャンセル料金の上限3が定められています。
キャンセル料の相場は?
ここで、キャンセル料の定め方についても理解しておきましょう。
ノーショーに対する損害賠償の考え方
一般的には、予約を申し込み、それを店舗が承諾した時点でお客さまとの間で契約が成立すると考えられます。一方的なキャンセルによって損害が出た場合、民法第415条の債務不履行、もしくは第709条の不法行為にあたるとして、店舗側が損害賠償請求を行うことができると考えられています。
しかしながら、店舗側が法外なキャンセル料金を請求することは、消費者契約法で禁止されており、店舗側が平均的な損害額を超えてキャンセル料金の請求を行うことはできません。店舗側がお客さまに請求できるキャンセル料金は、契約の解除に伴う平均的な被害額の範囲に抑えられます。
キャンセル料の具体的な金額の決め方
キャンセル料金は、前述の通り「平均的な損害の額」から算出します。前日や当日にキャンセルの連絡があった場合、代わりに他のお客さまにサービスを提供するなど、損害を補填できる可能性があるため、コース料金やプラン料金の全額を請求するのは難しいでしょう。一方で、連絡のない無断キャンセルの場合は、席や会場を空けたままお客さまを待っていたりなど、損害を補填できる可能性はかなり低くなるため、全額を請求することが多いようです。
キャンセル料については、「予約キャンセル料はいくらが適正料金?直前・無断も含めた対策を紹介」でも詳しく解説しています。
まとめ
今回紹介した対策のなかには、メールや電話でのリマインドなど今すぐに始められるものもあります。また、事前決済やクレジットカード情報の入力、キャンセル手続きの簡素化、キャンセル待ちリストの作成などは、予約システムを導入することで一気に実現する対策です。ぜひ検討してみてください。
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執筆は2022年3月22日時点の情報を参照しています。2024年12月13日に一部情報を更新しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash